今回は、平成30年12月に改訂があった、留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可ガイドラインに関して、ご説明したいと思います。

 

2018年末に国会で審議され話題となった入管法も2019年4月に改正されることになりました。それに伴い表題の留学生が「技術・人文知識・国際業務」へ変更するガイドラインも改訂されました。

今回のガイドラインの改訂は大きく、今までになかった下記のような表現が記載されています。

 

表現その1

一般的に、求人の際の採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と記載のあるような業務内容や、後述の上陸許可基準に規定される学歴又は実務経験に係る要件を満たしていない日本人従業員が一般的に従事している業務内容は、対象となりません。

 

表現その2

行おうとする活動が、「技術・人文知識・国際業務」に該当するものであるか否かは、在留期間中の活動を全体として捉えて判断することになります。したがって、例えば、「技術・人文知識・国際業務」に該当すると認められる活動は、全体として見ればごく一部であり、その余の部分は「技術・人文知識・国際業務」に該当するとは認められない、いわゆる単純な業務や、反復訓練によって従事可能な業務を行う場合には、「技術・人文知識・国際業務」に該当しないと判断されます。

 

行おうとする活動に、「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務が含まれる場合であっても、それが入社当初に行われる研修の一環であって、今後「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務を行う上で必ず必要になるものであり、日本人についても入社当初は同様の研修に従事するといった場合には、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更許可申請等の際に、あらかじめ具体的な研修計画等を提出することにより、認められることがあります。

 

表現その3

専修学校における専攻科目と従事しようとする業務については、相当程度の関連性を必要とします。ただし、直接「専攻」したとは認められないような場合でも、履修内容全体を見て、従事しようとする業務に係る知識を習得したと認められるような場合においては、相互的に判断した上で許否の判断を行っています。

 

 

【表現その1】を見たときは、ああ、このような言い方をするのだ・・とちょっと感動さえ覚えました。「未経験可、すぐ慣れます」というような業務はどのようなものかと考えますよね。事務ですと、各都道府県の最低時給またはそれに近いアルバイトやパートタイムで募集するような業務は該当しないと考えられます。軽作業ももちろん含まれません。

 

一般的な感覚で、大学や専門学校卒の日本人を正社員として採用するような業務であるかと考えられます。そのような業務も色々ありますよね。従前は業務内容に高度な知識が必要なものに限り「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が付与されてきましたが、「未経験可・すぐ慣れます」と「高度な知識が必要」の間の業務も今後「技術・人文知識・国際業務」で許可されることになります。どのような業務だったら許可可能性があるのかご不安なときは、当行政書士事務所へお気軽にお問合せくださいませ。当行政書士事務所の代表は、長年企業で勤めた経験をもとに、業務内容についてもご相談承ります。

 

 

従前は、同じ会社の大学や専門学校卒の日本人の正社員が、いわゆる店舗販売や現場業務をしていたとしても、外国人の場合はその業務で、技術・人文知識・国際業務ビザの許可されることはありませんでしたが、【表現その2】のようなその該当しない業務が将来技術・人文知識・国際業務に該当する業務を行う上で必要な業務と判断されれば許可されるということになります。その現場の業務を経験することは、将来の担当する技術・人文知識・国際業務に該当する業務に遂行するのに欠かせないことということだと考えます。

 

例えば、メーカーなどに採用され、工場で現場勤務を一定期間研修として経験し、本社や事業所にもどり、技術・人文知識・国際業務に該当する業務を行うと内容は、審査基準に該当するということになります。

 

ホテルなどの業務も、入社当時はレストランの配膳や客室の清掃等に従事していたとしても、他の日本人社員もどうような課程すなわち研修期間を経て、技術・人文知識・国際業務に該当する業務に必要と判断されれば許可されるということになります。

 

最終学歴が日本の大学の方は、専攻科目と従事する業務の関連性については、従来より柔軟に判断されています。(最終学歴が海外の大学であれば、国によって教育制度が違ってくるので個別の判断が必要です。)高等専門学校(いわゆる高専)も大学に準じた判断をされています。

そして【表現その3】の但し書きのとおり、最終学歴が専門学校の方も従前より柔軟な判断がされるようになっています。では、特筆すべき代表的な許可事例をお伝えいたします。

 

【専門学校を卒業し、専門士の称号を付与された留学生】

A.美容科を卒業した方が、化粧品販売会社において、ビューティーアドバイザーとしての活動を通じた美容製品に係る商品開発、マーケティング業務に従事するもの。

 

B.観光・レジャーサービス学科において、観光地理、旅行業務、セールスマーケティング、プレゼンテーション、ホスピタリティ論等を履修した者が、大型リゾートホテルにおいて、総合職として採用され、フロント業務、レストラン業務、客室業務についてもシフトにより担当するとして申請があったため、業務内容の詳細を求めたところ、一部にレストランにおける接客、客室備品オーダー対応等「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務が含まれていたが、申請人は総合職として雇用されており、主としてフロントでの翻訳・通訳業務、予約管理、ロビーにおけるコンシェルジュ業務、顧客満足度分析等を行うものであり、また総合職採用の日本人同様の業務であることが判明したもの。

 

C.工業専門課程のロボット・機械学科において、基礎製図、CAD実習、工業数理、材料力学、電子回路、プロダクトデザイン等を履修し、金属工作機械を製造する会社において、初年度研修の後、機械の精度調整、加工設備のプログラム作成、加工工具の選定、工作機械の組立作業等に従事するとして申請があり、同社において同様の業務に従事する他の日本人従業員の学歴、職歴、給与等について説明を求めたところ、同一の業務に従事するその他の日本人は、日本の理工学部を卒業した者であり、また、同一業務の求人についても、大卒相当の学歴要件で募集しており、給与についても申請人と同額支払われていることが判明したもの。

 

A.の事例では、「ビューティーアドバイザー」として業務しているところが注目すべき点です。もちろん、それを通じて商品開発やマーケティング業務をしています。

 

B.の事例では、レストランにおける接客、客室備品オーダー対応などが技術・人文知識・国際業務に該当しない業務が含まれていましたが、主たる業務は翻訳・通訳業務、予約管理、ロビーにおけるコンシェルジュ業務、顧客満足度分析であり、日本人総合職も同様であることで許可されています。

 

C.の事例では、機械の精度調節、加工工具の選定、工作機械の組立作業という工場内で想定される作業が含まれていましが、同様の作業を日本人の理工学部卒業の者も従事しており、同一業務の求人についても、大卒相当の学歴要件で募集しており、給与についても申請人と同額支払われているということで許可されています。

 

平成30年1月からは上述している基準で可否が判断されていきます。従前は許可されてこなかった業務も合理的な理由があれば、許可可能となってきました。

 

外国人戦力が必要な企業の皆様、業務内容でご不安を感じられたらお気軽に当行政書士事務所へお問合せくださいませ。