今回は、入国管理局が示している【在留資格審査要領】をとおして在留資格(ビザ)、経営管理ビザの審査基準に関してお伝えいたします。

 

入国管理局は、法令や「在留資格審査要領」を基準としてビザ(在留資格)の審査をしています。外国人の在留資格(ビザ)の判断に関しては、法務大臣(法務省、入国管理局)の判断に広い裁量権が与えられている、すなわち広く委ねられていることになっています。

しかし、日本は法治国家なので法務省や入国管理局が単に「なんとなく」判断するわけがなく、細かく定められている法律、規則等に従って許可、不許可の判断をし、最終的に判断が困難になれば法務大臣の決裁に委ねられることになります。

その判断材料の一つである【在留資格審査要領】には、経営・管理ビザや、その他のビザ(在留資格)の審査に関して、私たちがお伝えしていることの根拠などが記載されていますのでご紹介いたします。

 

経営・管理の在留資格(ビザ)とは?

「経営・管理」の在留資格(ビザ)とは、事業の【経営・管理業務】に外国人の方が従事できるようにするために設けられたものです。

 

平成26年の法改正前は投資・経営という名称で、外国人が日本に投資していることを前提とするものでしたが、改正後は前述のとおり、事業の【経営・管理業務】に従事できるよう在留資格(ビザ)を交付することになったのです。外国人の方が、an investment visaと仰る時がありますが、a business visaですと言い換えてお伝えしています。

 

入管法別表第1の2の「経営・管理」の項の下欄は、日本において行うことができる活動を次のとおりに規定しています。

「本邦(日本)において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」

 

この内容を、【審査要領】には、下記のように説明しています。

①日本において活動の基盤となる事務所等を開設し、貿易その他の事業の経営を開始して経営する。

②日本で既に営まれている貿易その他の事業の経営に参画すること。

③日本において貿易その他の事業の経営を開始した者若しくは日本におけるこれらの事業の経営を行っている者に代わってその経営を行うこと。

上記のように示されています。

 

「経営・管理」の活動の該当性に留意することは、

事業の経営又は管理に実質的に従事するものであることです。事業の経営に従事する活動には、事業の運営に関する重要事項の決定業務の執行が挙げられます。

申請者が新たに事業を開始しようとする場合は、事業の内容の具体性や申請人が取得した株式や事業に投下している資金の出所等の事業の監視に至る経緯全般から、申請人が単に名ばかりの経営者ではなく、実質的に当該事業の経営を行う者であるかどうかを判断することとされています。

すでに営まれている事業に経営者や管理者として招聘されるような場合も同様であり、それが比較的小規模の事業であり申請人の他に事業の経営や管理に従事する者がいるときは、投資の割合や業務内容をそれらの者と比較することも必要であるとされています。

 

他の資格との関係

企業の経営活動や管理活動は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格(ビザ)に定める活動と一部重複する、とされています。このように重複する場合は「経営・管理」の在留資格を決定するとされています。

 

また、申請人の業務内容に企業の経営活動や管理活動が含まれているが、「経営・管理」の活動に該当しない場合には、「技術・人文知識・国際業務」への該当性に留意するとされています。

 

なお、企業の職員として「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で在留していた外国人が、昇進等により当該企業の経営者や管理者となったときには、直ちに「経営・管理」の在留資格に変更することまでは要しないこととし、現に有する「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の在留期限の満了に併せて「経営・管理」の在留資格を決定しても差し支えないとされています。

 

 

審査基準について

1号

事業を営むための事業所が日本に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合にあっては、事業を営むための事業として使用する施設が日本に確保されていること。

 

2号

申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。

その経営又は管理に従事する者以外に日本に居住する二人以上の常勤職員が従事して営まれるものであること。

 

資本金の額又は出資の総額が5百万円以上であること。

 

イ又はロに準じる規模であると認められるものであること。

 

上記 2号ハは、イ、ロに該当しない場合に設けられていますが、基準は次のような規模と示されています。

 

(例1) 常勤職員(日本人または居住資格を持って在留している外国人)が1人しか従事していないような場合に、もう1人を従事させるのに要する費用を投下して営まれているような事業規模。この場合の当該費用としては概ね250万円程度が必要と考えられる。(常勤職員1人の年間報酬額250万円、出資または資本金額250万円)

 

(例2) 個人事業の形態で事業を開始しようとする場合には、事業を営むのに必要なものとして投下されている総額で、次がこれに当たるとされています。

①事業所の確保:当該事業を営むための事業所として使用する施設の確保に係る経費

②雇用する職員の給与等:役員報酬及び常勤・非常勤を問わず、当該事業所において雇用する職員に支払われる報酬に係る経費

③その他:事業所に備え付けるための事務機器購入経費及び事務所維持に係る経費

 

入国管理局で示されている審査要領は、経営管理ビザ(在留資格)に関する該当範囲が次のように示されています。

 

1)適法に行われる業務であれば、その活動に制限はない。

2)申請人が経営又は管理に従事する事業は、外国人若しくは外国法人が現に投資しているもののみでなく、日本人若しくは日本法人のみが投資しているものであっても、「経営・管理」の在留資格に該当する。

3)経営又は管理に従事する者が、純粋な経営又は管理に当たる活動のほかに、その一環として行う現業に従事する活動は、「経営・管理」の在留資格の活動に含まれる。ただし、主たる活動が現業に従事するものと認められる場合は、「経営・管理」の在留資格に該当しない

4)複数の者が事業の経営又は管理に従事している場合には、それだけの人数の者が事業の経営又は管理に従事することが必要とされている程度の事業規模、業務量、売上げ、従業員数等がなければならず、これから見て、申請人が事業の経営又は管理に主たる活動として従事すると認められるかどうかを判断する。

具体的には、

①事業の規模や業務量等の状況を勘案して、それぞれの外国人が事業の経営又は管理を主たる活動として行うことについて、合理的な理由が認められること、②事業の経営又は管理に係る業務について、それぞれの外国人ごとに従事することとなる業務の内容が明確になっていること、③それぞれの外国人が経営又は管理に係る業務の対価として相当の報酬の支払いを受けることとなっていること等。

 

事業の継続性に関する留意事項

単年度の決算状況を重視するのではなく、賃借状況等も含めて総合的に判断することが必要とされています。なお、債務超過が続くような場合は、資金の借入先を確認するなどし、事業の実態、本人の活動実態に虚偽性がないかどうか確認する。特に、2年以上連続赤字の場合、本人の活動内容を含め、慎重に調査するとされています。

 

以上、一部を皆様へお伝えいたした。内容から分かるように、実質上経営が行われ、経営者としての活動をしているか複数の観点から確認して判断されるように法令が定められています。注目していただきたいのは、【審査要領】でハッキリと「申請人が単に名ばかりの経営者ではなく、実質的に当該事業の経営を行う者であるかどうかを判断する」と示されていることです。もちろん、企業として利益も出さなくてはいけません。

 

これから日本で起業しようとされている方、経営を引き継ごうとされている方、すでに日本にある企業の役員になる予定の方、社内で役員や管理職に昇進予定の方など、または経営管理ビザの更新に関することで不明点があれば、何時でもお気軽に当行政書士事務所へお問合せくださいませ。