今回は、令和元年5月に策定された、留学生の就職支援に係る「特定活動」(日本の大学卒業者)についてのガイドラインの解説をしていきたいと思います。

平成31年4月(2019年4月)より出入国管理法が大幅に改正され、それに伴い日本で就労を希望する外国人の方に選択の幅を広げています。(2019年1月の記事も是非ご参照ください。)今回も法務省告示により下記の要件を満たす方は、「技術・人文知識・国際業務」においては一般的なサービス業務や製造業務が主たる活動となるものは認められませんでしたが、当告示要件に該当する場合は一般的なサービス業務や製造業務が可能になってきます。制度の主旨は、「日本の大学卒業者または大学院修了者において修得した広い知識、応用的能力等」のほか、「留学生としての経験を通じて得た高い日本語能力」を活動していただける場を広げるということです。

対象の活動

日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む、幅広い業務

対象者

・日本の大学を卒業している。(学位授与者)

・日本の大学院を修了している。(学位授与者)

対象外の方

・短期大学卒業者

・専修学校卒業者

・外国の大学卒業者

・外国の大学院修了者

日本語能力について

・日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上を有する方。

・対象大学または大学院で、「日本語」を専攻して大学を卒業した方

・外国の大学又は大学院で「日本語」を専攻して卒業または修了した方、但し日本の大学卒業または大学院を修了していることが必要です。

日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務とは?

対象:「翻訳・通訳」の要素のある業務や、自ら第三者に働きかける際に必要となる日本語能力が求められ、他者との双方向のコミュニケーションを要する業務

対象外:雇用主等からの作業指示を理解し、自らの作業を行うだけの受動的な業務

日本の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用的能力等を活用するとは?

従事しようとする業務内容に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の対象となる学術上の要素等を背景とする一定水準以上の業務が含まれていること、又は、今後当該業務に従事することが見込まれることを意味します。

具体的な活動例

A. 飲食店に採用され、店舗において外国人客に対する通訳を兼ねた接客業務を行う。(それに併せて、日本人に対する接客を行うことも含む。)※厨房での皿洗いや清掃のみに従事することは認められません。

B. 工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うもの。※ラインで指示された作業のみ従事することは認められません。

C. 小売店において、仕入れや商品企画等と併せ、通訳を兼ねた外国人客に対する接客販売業務を行うもの。(それに併せて、日本人に対する接客販売業務を行うことを含む。)※商品の陳列や店舗の清掃のみに従事することは認められません。

D. ホテルや旅館において、翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設、更新作業を行うものや、外国人客への通訳(案内)、他の外国人従業員への指導を兼ねたベルスタッフやドアマンとしての接客を行うもの。(それに併せて、日本人に対する接客を行うことを含む。)※客室の清掃のみ従事することは認められません。

E. タクシー会社に採用され、観光客(集客)のための企画・立案を行いつつ、自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの。(それに併せて、通常のタクシードライバーとして乗務することを含む。)※車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。

F. 介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、外国人利用者を含む利用者との間との意思疎通を図り、介護業務に従事するもの。※施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。

雇用形態

・公私の機関と契約する常勤の職員であること、すなわち「雇用契約」により「被雇用者」となり、当然ながら社会保険の加入も必須です。

・短時間のパートタイムやアルバイトは認められません。

・派遣社員として派遣先において就労活動することも認められません。

報酬について

・地域や個々の企業の賃金体系を基礎に、同種の業務に従事する日本人と同等以上であるか、また、他の企業の同種の業務に従事する者の賃金を参考にして日本人と同等額以上であるかについて判断されます。

・当制度の場合、昇給面を含めて、日本人大卒者・院卒者の賃金も参考とされます。

・元留学生が本国等において就職し、実務経験を積んでいる場合、その経験に応じた報酬が支払われていることとなっていることについても確認されます。

家族の滞在

本制度「特定活動」を指定された方の扶養を受ける「配偶者」又は「子」については「特定活動(日本の大学卒業者の配偶者等)」の在留資格で、日常的な活動が認められます。

 

要件等は上記のとおりです。一部「特定技能」で活動できる内容もありますが、特定技能外国人支援計画書の策定や登録支援機関との支援委託契約などの必要がなく、要件を満たせば一般的な被雇用者として雇い入れることができることです。しかし、日本語能力N1または相当の方というのはハードルは高いですね。日本人でさえ油断して受検すると落ちると聞いてますので。しかしながら、日本語能力の高い方を雇い入れたい!または就労を考えている留学生の方など不明点がありましたら、ご遠慮なく当行政書士事務所へお問合せくださいませ。