外国人観光客が増えてきて、対応できる外国人の採用をお考えのホテル・旅館も多いことかと思います。

でもどのような職務についてもらえばよいか迷われることも多いかと思います。

今回は、採用時と職種について注意していただきたい点をご紹介いたします。

ホテル・旅館などにおいて在留資格に該当する活動

例えば、日本のもしくは外国の大学、または日本の専門学校を卒業した外国人が、ホテル・旅館等の宿泊施設に就職する場合は、「技術・人文知識・国際業務」への該当性を審査されることになります。

詳しい内容は別のブログで紹介していますので割愛いたしますが、ポイントとしては日本で従事しようとする活動が、教育機関で学んだ専門性に関連し、(入管法に規定される在留資格に該当するものであるか否か)職務が妥当かどうかを判断されることになります。

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したがって、「技術・人文知識・国際業務」の活動に該当しない業務に従事することは認められません。

ホテル・旅館業における許可・不許可事例

では、具体的な例をお伝えいたします。

許可事例

①本国で大学の観光学科を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する日本のホテルとの契約に基づき、月額約22万円の報酬を受けて、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客担当としてのホテル内の施設案内業務に従事する。

②本国で大学を卒業した者が、本国からの観光客が多く利用する日本の旅館との契約に基づき、月額約20万円の報酬を受けて、集客拡大のための本国旅行会社との交渉に当たっての通訳・翻訳業務、従業員に対する外国語指導の業務等に従事する。

③日本で経済学を専攻して大学を卒業した者が、日本の空港と隣接するホテルと契約に基づき、月額約25万円の報酬を受けて、集客拡大のためのマーケティングリサーチ、外国人観光客向けの宣伝媒体(ホームページなど)作成などの広報業務等に従事する。

④日本で経営学を専攻して大学を卒業した者が、外国人観光客が多く利用する日本のホテルとの契約に基づき総合職(幹部候補生)として採用された後、2か月間の座学を中心とした研修及び4か月間のフロントやレストランの接客研修を経て、月額約30万円の報酬を受けて、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客からの要望対応、宿泊プランの企画立案業務等に従事するもの。

⑤日本の専門学校で日本語の翻訳・通訳コースを専攻して卒業し、専門士の称号を付与された者が、外国人観光客が多く利用する日本の旅館において月額約20万円の報酬を受けて、フロントでの外国語を用いた案内、外国語版ホームページの作成、館内案内の多言語表示への対応のための翻訳等の業務等に従事するもの。

⑥日本の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務を専攻し、専門士の称号を付与された者が、宿泊客の多くを外国人が占めているホテルにおいて、修得した知識を生かしてのフロント業務や、宿泊プランの企画立案等の業務に従事するもの。

⑦海外のホテル・レストランにおいてマネジメント業務に10年従事していた者が、国際的に知名度の高い日本のホテルとの契約に基づき、月額60万円の報酬を受けてレストランのコンセプトデザイン、宣伝・広報に係る業務に従事する。

 

許可事例に共通している事項は、

・大学卒または日本の専門学校(専門士取得コース)卒

・報酬は月額20万円以上

・外国人観光客が多く利用するホテルや旅館

考え方

不許可事例

①本国で経済学を専攻して大学を卒業した者が、日本のホテルに採用されるとして申請があったが、従事する予定の業務に係る詳細な資料の提出を求めたところ、主たる業務が宿泊客の荷物の運搬及び客室の清掃業務であり、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となった。

②本国で日本語学を専攻して大学を卒業した者が、日本の旅館において、外国人宿泊客の通訳業務を行うとして申請があったが、当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請人の母国語と異なっており、申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは認められないことから不許可となった。

③日本で商学を専攻して大学を卒業した者が、新規に設立された日本のホテルに採用されるとして申請があったが、従事しようとする業務の内容が、駐車誘導、レストランにおける料理の配膳・片付けであったことから、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可となった。

④日本で法学を専攻して大学を卒業した者が、日本の旅館との契約に基づき月額約15万円の報酬を受けて、フロントでの外国語を用いた予約対応や外国人宿泊客の館内案内等の業務を行うとして申請があったが、申請人と同時期に採用され、同種の業務を行う日本人従業員の報酬が月額約20万円であることが判明し、額が異なることについて合理的な理由も認められなかったことから、報酬について日本人が従事する場合と同等額以上と認められずに不許可となった。

⑤日本の専門学校において服飾デザイン学科を卒業し、専門士の称号を付与された者が、日本の旅館との契約に音付き、フロントでの受付業務を行うとして申請があったが、専門学校における専門科目と従事しようとする業務との間に関連性が認められないことから不許可となった。

⑥日本の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し、専門士の称号を付与されたものが、日本のホテルとの契約に基づき、フロント業務を行うとして申請があったが、提出された資料から採用後最初2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ、これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不許可となったもの。

 

 

不許可事例の特徴は、下記の通りです。

・業務が単純作業的なものである。

・申請している業務と申請人の経歴に合理性がない。

・専門学校の専攻科目と業務の不一致

・日本人と同等の報酬ではない。

上記は「技術・人文知識・国際業務」のビザ(在留資格)で、ホテルや旅館以外で働くときも共通して不許可要因となるものです。

考え方

戦力として採用したい、したけどどのような業務を任せても良いか判断ができなければ、目安として「単純労働的」なことで採用できないと思ってください。

一時的に「技術・人文知識・国際業務」に該当しない業務を行わざるを得ない場面も想定されますが(フロント業務中に団体客のチェックインの際、急きょ宿泊客の荷物を運搬することになった場合など)このような場合は、入管法上直ちに問題とされるものではありません。

しかし結果的にこうした業務が主たる活動になっていることが判明した場合は、「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動を行っていないとして、在留期間更新を不許可となるなどの措置をとられる可能性がありますので、ご注意ください。

まとめ

許可・不許可の事例をご覧いただくと適否を判断する材料になるかと思います。

ホテルでは、一人で何役も果たさなければいけない業務であり、そのようなケースも多々あると思います。
しかし、不適法な業務を続けていると、のちにビザの更新不許可など、多大な損失にいたるケースがございます。

「このようなケースがどうだろう。」と疑問に思う点がありましたら、当行政書士事務所にお気軽にお問合せいただければ幸いです!